2014年4月15日火曜日

「よしこさんと七色の花」展


会期:2014年3月3日~5月10日
会場:大學堂・屋根裏博物館
開館時間:10時~17時
※水・日曜、祝日は休館
入場無料

【長門屋とよしこさん】
 

よしこさんは門司港の栄町銀天街にある「長門屋」で働いています。仕事の合間に描く絵で店内は、数えきれないほどの絵であふれています。彼女の作品の多くは、サインペンやボールペンなどの日常的な画材によって色紙に描かれています。


その画面いっぱいに踊る緻密で自由な筆致と、めまいを起こしそうな色彩が生み出す素朴で懐かしいメルヘン世界は、観るものを魅了し、そしてどこか温かい気持ちにさせます。


よしこさんは語ります。「描きたいものを描いて、色んな人に観てもらい、喜んでくれれば私も幸せ」。多くの人が彼女の人柄や作品に惹かれ店を訪れます。



本展では、すでにお店の中には展示しきれない膨大な作品の中から、描かずにはいられなかった熱い情動の結晶を選りすぐりました。



【開催に際して】


門司の街ではじめてよしこさんの絵に出会ったのは、2007の秋のことでした。大学の博物館実習のために学生たちをカボチャドキヤ国立美術館に引率する道すがら、店の中に雑然と貼られた色紙をみてしまったのです。


私は動揺を隠せませんでした。なんと呼べばよいのでしょう。それはまるで生まれたままの無防備な絵でした。学芸員を志す学生たちも、彼らなりの芸術への信念にいくばくかの不安を感じたに違いありません。


それから毎年、実習の際には必ず長門屋さんにたちよることにしました。よしこさんの絵は年ごとに新しい印象をあたえてくれます。いつかひとつところに並べてゆっくりと鑑賞してみたいと思っていました。そしてそれはぜひとも春でなければなりません。


この願いがようやくここにかなうことをとても喜ばしく思います。みなさまとともに、しばしのあいだ七色の花を楽しみたいと思います。


【よしこさんの作品について】



よしこさんの作品の多くは、サインペンやボールペンなどの日常的な画材によって描かれています。画面いっぱいに踊る自由な筆致と、緻密で鮮やかな色彩が生み出す独特な世界は、観るものを魅惑し、そして、どこか懐かしい気持ちにしてくれます。それは、この豊かな幻想世界が、よしこさん自身の野山や海で遊んだ、幼い頃の記憶から生まれているからなのかもしれません。



よしこさんの膨大な数の作品では、さまざまなモチーフが取り上げられています。それらは、およそ時代順に「子どもと動物たちの物語」「花と少女の夢世界」「街と旅の幻影」「海と野山の収穫祭」の4作品群に分類されます。



本企画展では、それぞれの作品群から選ばれた秀作を、月ごとに一部を入れ替えながら、できるだけたくさん観ていただきたいと考えています。また、本企画展のために制作された、よしこさんにとって初の試みとなる大型作品を、会期中に特別公開いたします。屋根裏博物館の壁一面に咲いた七色の花の中から、あなたの春の幸せをみつけて下さい



「子どもと動物たちの物語」
もっとも初期の作品群で、よしこさんの魅力が存分に発揮されている物語世界。よしこさん自身の子どもの頃の思い出や、どこかで読んだ本の中のお話が、不思議な幻想に姿を変えてよみがえる。この生きとし生けるものが融合する独特なアニミズム世界は、観る者の視線をとらえてはなさない。



「花と少女の夢世界」
春が好きなよしこさんは、少女と花をモチーフにした作品を数多く描いている。色紙の中央に鮮やかに描かれた桜の木は世界樹のような存在感をもって私たちの前に迫ってくる。少女たちもまた、かぎりなく花に近い存在なのだろう。この一角は、まるで福岡柳川の「さげもん」をみるように華やかな春の雰囲気をかもしだし、ひとときの雛の夢にひたることができる。



「街と旅の幻影」
海と山に囲まれた山口山陰の寒村がよしこさんの原風景であり、今は門司港の街に暮らしている。よしこさんの想像力は、見慣れた日常を基点に時代や空間を越え、地球上のあらゆる場所へとはばたいていく。インドやタイ、欧州のどこか、失われてしまった日本の田園。花と少女の世界とは対照的な大胆な筆致によって、よしこさんの心の旅の深淵が刻まれていく。



「海と野山の収穫祭」
満ちあふれる生命。生きていくための食べ物。幼い頃に海や野山で遊び、さまざまな自然の幸を口にしてきたよしこさん。そして今も市場で働くよしこさん。食こそが人間の幸せであり、命の源である。この作品群は最新作を含む大型作品がならび、よしこさんの新境地が展開されている。大胆な構図と森羅万象への賛歌は、生と死がそのぎりぎりのところで邂逅するひとつの曼荼羅をみる思いである。



 【プロフィール】
山口県出身。
幼少の頃から絵を描くのが好きで、外でばらまかれるビラやごみ捨て場にある紙を探しては落書きをしていた。
小学校3年生の時に美術の先生に職員室へ呼ばれ、絵を褒められる。その後も絵のコンクールに何度も入選をする。
19歳の時、門司へやってくる。
20歳で結婚、出産をする。
子育てをしつつ、新聞配達をしながら働く。
その間も絵は描いていたが、本格的に描き始めたのは数年前。
現在63歳。朝はトイレ掃除や落ち葉拾いの仕事もしながら、門司港・栄町商店街のながと屋で働いている。
座右の銘は「一期一会の出会いを大事に」。