2011年2月3日木曜日

祝島から来た虹のカヤック隊


1月26日、祝島から「上関原発建設反対」メッセージを伝えにカヤック隊の面々、若者3人が大學堂にやってきました。

祝島は山口県の南東部、瀬戸内海国立公園内に浮かぶ、行政区分は熊毛郡上関町の島。島の周囲は12㎞、人口500人ほどの小さな島です。島の周りは好漁場、アジ、タイ、タコ、ヒラメ、サヨリなど豊かな海産物を獲る漁業と農業が生業です。

そんな島の対岸3.5㎞先に原子力発電所を作るという計画が持ち上がったのは1982年。以来、島の人たちは、約10億円に及ぶという漁業補償金の受け取りも拒否し、反対を訴え続けているとのこと。

放射能の汚染、発電所の事故、はかりしれない人間や自然への影響のリスクを棚上げにして(つまり、都会から遠いところに住む「少ない」ひとたちに押し付けて)、「日本の電力の3分の1が原発でつくられている」「原発を使わなければ電気が足りない」という偽りのもと、原発建設が達成されてしまってよいのか。プルトニウムの処理方法さえ先送りにしているのが現状なのに、さらに増やしていくなんて、とんでもない。

カヤック隊の3人は、静かに私たちが知らなければならないことを伝えました。
大學堂、斜向いの宮本のおいちゃんは、レゲエ風カヤック隊の音楽に「どっこいしょ!」と合いの手をいれ、リンゴを差し入れしてくれました。

カヤック隊が用意したハガキに、山口県庁前ハンガーストライキ実行中の若者たちへ応援メッセージをみんなで書きました。ハンガーストライキなので、応援したいけれどもくれぐれも無理はしてほしくない、という気持ちもありつつ(その後のニュースでハンガーストライキの遂行はおわったとのことを知りほっとしました)。

瀬戸内海を介してここ北九州からも近い祝島。
今回の虹のカヤック隊の軌跡によって原発問題を共有する人が増えればと思います。

日本の原発のことについて知りたい方は是非とも映画「東京原発」をお勧めします。
祝島のドキュメンタリー映画「ミツバチの羽音と地球の回転」も機会があったら観たいです。

===========================
http://888earth.net/staffblog/2011/02/post-142.html

◎2月8日付の毎日新聞 朝刊・オピニオン欄 「地方発」のコーナーにて「祝島自然エネルギー100%プロジェクト」について監督が寄稿されました。(下記全文)2011.2.8毎日新聞.jpg自然エネルギー100%で自立を目指す島

日本のエネルギー政策の矛盾が噴出する現場の選択

2011年1月山口県、瀬戸内海に浮かぶ祝島が日本の離島では初めて、自然エネルギー100%で自立すると宣言した。人口約500人の小さな島の大きな挑戦が始まった。

私は2008年から二年かけて祝島とスウェーデンを舞台に「ミツバチの羽音と地球の回転」という映画を製作した。

祝島では千年以上も昔、暴風雨に遭って遭難した神官を救ったことを機に大分県国東半島にある伊美神社と五穀豊穣を祈願する神楽を奉納する神舞という祭りを4年ごとに開催している。

平均年齢75歳という高齢化がを物ともせず、櫂転馬船で海上をパレードし、山から切り出した竹で仮神殿を建て、女たちは海の幸、山の幸で神官や楽師たちをもてなして祭りを支える。島の豊かな文化がこの祭りにぎゅっと集約している。

島民の多くが無農薬のびわを育て、ひじきを採り、半農半漁で自給自足的な生活を営んでいる。島の3.5キロ対岸に上関原発建設計画があり、足掛け29年も島民はこの計画に反対してきた。暮らしを支える海を次世代に残したいと願ってのことだ。

原発建設予定地田ノ浦は環境破壊が進んだ瀬戸内海にあって「奇跡の海」と呼ばれ、希少生物がひしめく生物多様性の宝庫であり、破壊すれば取り返しがつかないと日本生態学界を始めとする4つの学会が環境アセスメントの見直しを求めている。スナメリ、ナメクジウオ、カンムリウミスズメ等が棲む絶妙な生態系を破壊しない鯛の一本釣り漁法を祝島の漁師たちは誇りにしている。

経済成長の時期、日本中の地域がかけがえのない環境を開発という名の下に破壊してきた。祝島が位置する上関もまた原発を建てることが唯一の経済振興だと信じて誘致した。しかし30年前原発を誘致した福島県双葉町は今や町長の給与も払えないほど困窮し、経済振興効果は霧散している。

世界では石油やウランなどの枯渇性エネルギーから再生可能エネルギーへと雪崩をうってシフトしている。祝島は島おこしのために今回のプロジェクトを立ち上げた。「祝島自然エネルギー100%プロジェクト」が島に若者の働く場を作り出し、宅老所にエネルギーを供給し、島をより持続可能な地域にしていくことが期待されている。それを支えようと全国の人々が何らかの1%を寄付する運動もまた同時に始まった。ここから日本のエネルギーシフトが始まる。

上関原発計画を巡る問題
1982年、中国電力は山口県上関町田ノ浦に原子力発電所二基の建設を計画。(総工費予算9千億円)対岸の祝島は10億8千万円の漁業補償金の受け取りを拒否し、「上関原発を建てさせない祝島島民の会」を結成して反対を続けている。目下、6つの裁判が係争中。予定海域の埋め立てを巡って祝島のみならず全国から現地に集まった若者たちが抗議行動を続けている。また自然の権利訴訟として環境・生物の専門家たちが計画の見直しを求めている。
この海域には日本で5千羽しかいないというカンムリウミスズメが確認されている。

鎌仲ひとみ
映像作家